
2025年8月2日、メイン講師は、九州大学特別協働教員の高松里(さとし)先生。
当サロンでも、ナラティヴ・セラピーは取り入れていて、
例えば、「超ナラティヴ・セラピー的だった 映画“地下鉄に乗って”(2006)」(https://kobe-counseling-salon.com/ridethesubway/)なんてブログも書いています(2023年9月18日付)。
で、高松先生曰く、我々は、過去・現在・未来をつなぐ、
ある程度一貫した“ライフストーリー”の中で生きている。
ところがそのライフストーリー、
トラウマティックな出来事はもちろん、
何億円当たった!というような一見好ましい出来事にも弱い。
なぜなら、“普通”じゃない出来事が起きると、
ライフストーリーの一貫性が失われるため、
ライフストーリーが混乱するから。
さらに、それら一貫性を乱す出来事を表現する言葉を持てずに来てしまうため、
ライフストーリーに吸収されずに、
外に置かれたままになったり、離断されてしまうからだと。
だから、「語って来れなかった過去の経験は、瞬間冷凍したままではなく、
語られることを求めている!」のだと。
(これ、認知行動療法で言うところの、エクスポージャーに近いですね)。
ならば、何でも語ってもらえば良いのかと言うと、それがそうではない。
セラピストが「傾聴」だけしていると、
語り手がそれまで一人でぐるぐるもんもんと考えていた、
あまり好ましくないドミナント(固定的)な話が強化されてしまうため。
そこで、セラピストが適切な質問をしていくことで、
同じ過去経験が、オルタナティヴ(別)なストーリー、
違う意味付けに変化していくと、高松先生は述べられています。
適切な質問、これぞまさしく、
皆さんが当サロンで経験して下さっている、
矢継ぎ早質問(笑)ですね。
ここからは、『ナラティヴ・セラピー 社会構成主義の実践』(S・マクナミー K・J・ガ―ゲン編 遠見書房)を引用します。
実はこの「質問」は、ナラティヴ・セラピーの「治療的質問」。
セラピーが達成したいことは、語られる物語を変化させること。
つまり、これまでとらわれてきた視点とは違う、
「いまだ語られていない鉱脈」を探ることで、
「人生に新たな意味と理解をもたらし、
新たな主人公が登場する物語の展開が開かれる」のを目指します。
そのための、我々セラピストの主な仕事は、「質問を見つけること」。
そして、「このような質問は、あらかじめ計画したり予想したりできるものではない。たった今言われたこと、たった今説明されたことが、
セラピストが発すべき質問の回答となり、
治療という物語の進展が次の質問を用意させる」のです(p.61、p.62)。
というわけで、これまで手放せなかったストーリーとは違う、
自分一人では思いもよらなかったストーリーに出会いに、
ぜひ、思いもよらない質問体験(笑)にお越し下さい。
お待ちしています♪