Eテレ【100分de名著】 阪神・淡路大震災30年『心の傷を癒すということ』を読む(2025年1月6日 22:25~毎週放送 〈全4回〉)

もう30年でもあり、やっと30年でもあり。

忘れてはいけないという思いと、忘れたい

出来ることならなかったことにして欲しいという思いと。

 

たくさんの震災関連報道、情報の中で、今日1月17日を迎えるにあたり、

こうした拮抗する思いと、

そして涙涙の日々を送られて来た方も多いのではないでしょうか。

 

私もその一人。

30年前西宮で被災し、全壊した家から小学校に避難したという話は時々させてもらっています。

(時々と思ったら、まあまあしていました。

〇学生インターン生さんからインタビューを受けた時の記事

〇2023年2月24日付けブログ「心のケアー『ひとりぼっちにさせない』人と物と事と」

〇2023年11月14日付けブログ「元気飯!消防隊員、潜水士、救助隊員のカレー」

〇2024年1月17日付けブログ「1.17阪神・淡路大震災」

〇2024年12月9日付けブログ「おむすびはセラピスト」)。

 

  

2023年2月24日付けブログ、「心のケアー『ひとりぼっちにさせない』人と物と事と」でも触れた、震災当時神戸大学医学部の精神科医だった(あん)(かつ)(まさ)氏。

自身も被災者でありながら、被災した人達の“心の傷”に向き合い続け、

2000年に39歳でがんで他界されました。

 

Eテレ【100分de名著】では、その安氏が記した著書『心の傷を癒すということ』(2001年 角川ソフィア文庫)を、

精神科医で一橋大学教授の宮地尚子氏と案内役の伊集院光氏、

安部みちこアナウンサーが4回に分けて読み解いています。

 

安氏と個人的に親交もあったという宮地氏は、第1回放送回で、

それまであまり使われてこなかった“心のケア”という言葉に着目した安氏の功績を紹介すると共に、

実は彼はジャズピアノの腕前ユーモアのセンスも抜群だったという、

近しい人だから知るエピソードも語っていました。

 

また、安氏の著書『心の傷を癒すということ』からは、

以下の文章が紹介されていました。少し長いですが、お読み下さい。

 

「私は学生時代から神戸に住み、もう15年以上になる。

しかし、ただ住んでいるだけで、地元のコミュニティ(地域社会)に

属しているという実感はなかった(中略)。

だが、地震が起きてから同じマンションの住人が私の部屋を訪ねてくれた。

救援物資をおすそ分けしてくれ、近くで炊き出しがあると妻を誘ってくれた。

すぐ近くに住む友人が、そのまた友人の家に風呂を借りに行くとき、

私の家族に声を掛けてくれた(中略)。

災害の後、生き残った住民がある種の共同体感情の下で身をよせあう。

これを災害心理学では「ハネムーン現象」「ハネムーン期」という。

しかし、私にとって、それは文献上の知識ではない

思いがけないやさしさや思いやりを肌で感じ

人間とはすばらしい存在であると私は思った。

これは真にかけがいのない思い出として、今も胸の内にある」と。

 

私も然り。

普段挨拶しかしたことのなかった近所の人が、

私の姿を見て「良かった!」と抱きしめてくれたり

顔を合わせたこともない近所の人が、

玄関がつぶれて裸足だった私にサンダルを貸してくれたり

壊れて使えなくなっている固定電話を自力でつなぎ直した隣町のおっちゃんが、

「使い」と言ってくれたり

それらが、どれほど有難かったか

 

私が体験したと同じようなことがそこかしこで起き、

私と同じような思いを持つ人がそこかしこに居たことを再認識し、涙涙でした。

 

そして、こういった「外からの押し付けではなく、内から自然に手をつなぐ

『これこそが防災だ』」と言う伊集院静氏のコメントが、胸に沁みました。

 

第2回放送回では、

苦しみを癒すことよりも、それを理解することよりも前に

苦しみがそこにある、ということに、われわれは気づかなくてはならない(中略)。

それは隣人としてその人の傍らにたたずんだとき、はじめて感じられるものなのだ」と。

 

それを受けてスタジオでは、「何をすればよいか」よりも

苦しみがそこにあることに気付く

ただ一緒に居ることの大切さが語られていました。

 

この放送のためのテキスト、『100 de名著 克昌『心の傷を癒すということ』2025年1月』(NHK出版)には、

「同じ体験をした人でなければ、話しても分かってもらえない」と思うものの、

「しかしだからといって話すことを拒絶しているわけではない」(p.46)。

「わかりっこないけど、わかってほしい」p.45)という言葉が出て来ます。

 

今後もそうやってせめぎあう気持ちと共に、

もう40年、50年、やっと40年、50年を迎えて行くことになるかもしれませんが、

これからもずっと、私も皆さんと一緒に居たいと思っています。

 

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