兵庫県精神神経科診療所協会 市民公開講演会「発達障がいの診断とその後のケアについて」にZoom参加しました

 

2025年11月29日、座長は、橋本健志クリニック橋本健志 先生

講師は、兵庫県立ひょうごこころの医療センター 名誉院長 田中究 先生

 

田中先生、早口&関西弁バリバリでしたが、

時々「ね」とおっしゃる語尾にまなざしの優しさと、

書籍を何十冊読むのに匹敵、いやそれ以上の知見に溢れた講演会でした。

 

まなざしの優しさは、発達障がいという病気はなく、

診断もその人の役に立たないのならあまり意味はなく、

それよりも「その人が何につまずき、何に困っているのか。

生活しにくい環境、社会を何とかするのが最も重要」という、

冒頭のお話に既に表れていました。

 

知見もふんだんで、

発達障がいは、「自閉症スペクトラム症(ASD)」「注意欠陥多動症(ADHD)」

「極限性学習症(LD)」に分類されること。

 

ASDの特徴としては、

目に見えないもの、抽象的なものの理解がしにくく、相手の表情などから気持ちをくみ取ったり、場の空気を読むのが苦手

孤立したり、一方的過ぎたり、臨機応変、双方向の親密な対人関係が構築出来ない

といった、「対人関係の苦手さ」と、

 

興味の範囲が狭く、同じ行動を繰り返す

自分の関心、やり方、ペース重視で、手順がいつも同じでないと納得出来ない

電車や数字など、特定の事柄に強い関心を示すが、興味のないことにはノータッチ

感覚過敏、感覚鈍麻

といった、「こだわりの強さ」があること。

 

ADHDの特徴としては、

そそっかしく、机から物を落としやすい

忘れ物やうかりミスが多い

整理整頓が苦手

授業や仕事に集中出来ない

話し掛けられているのに、上の空に見える

人との約束を忘れたり、重複したりする

といった、「不注意」

 

席にじっと座っていられず、常にそわそわ、意味もなく手足を動かす

気が散りやすく、思いつきで行動する

勝手に話し出したり、集団行動が出来ない

といった、「多動・衝動性」

 

LD「読字不全」だと、

読んでいる箇所を、指で押さえながら確認して読んだり

初期の頃は、音読よりも黙読が苦手だったり

LD「書字不全」だと、

「わ」と「は」、「お」と「を」など、同じ音を書く時に間違うことが多かったり

画数が多い感じを間違うことが多かったり と、

基本知識をがっちり伝えて下さいました。

 

その上で、現代は、

サービス業等第3次産業が主体で、コミュニケーションが重要視されるため、

これらの特徴を持つ、「マイワールド、マイルール、マイペース」な、

「『一見変わった人』が居てもいいやん」とはなりにくい社会なのだと。

 

ならば、だからこそ、障害や問題点ばかりを取り上げるのではなく

むしろ高い能力にも注目して行こうという、特性を肯定的に捉え直した

「アスピー(Aspie)の発見基準」という考え方があるそうで、

 

例えば、

「空気が読めない」は➡「周囲に左右されない」 だし、

「予定変更が苦手」は➡「計画的」 だし、

「多動」は➡「活動的」といった具合。

 

これ、まさにリフレーミングですね(参考 2024年2月7日付けブログ “これしかネタがない”んじゃなくて→“何度も繰り返し味わいたいんです”歯があるうちに https://kobe-counseling-salon.com/gogakunotensai2/ )。

 

で、これを地で行かれたのが、「窓ぎわのトットちゃん」の黒柳徹子さん

『授業中に、机の蓋を開けたり閉めたりetc…クラスの迷惑』と、担任の先生に言われて退学させられたことを、「心から感謝している」。

「もしそうでなかったら、コンプレックスの強い大人になっただろうから」と。

 

他にも、

『みんなが手話で話した島』(ノーラ・エレン・グロース著 ハヤカワ文庫)の、

遺伝性の聴覚障がい者が多く住むマーサズ・ヴィンヤード島では、

聞こえる、聞こえないにかかわらず、誰もが手話を使ってコミュニケーションをとっていて、環境いかんで、「障がい」とはならない話とか。

 

つまり、障がいを直そうとするのではなく

例えば、向いている仕事に就くとか、マニュアルを明確化するとか、

メンターを付けるとか。

環境「に」ではなく、環境「を」その人に合わせて行くという、

一見逆転の発想は、目を洗われました。

 

そうして、出来ることは自分でするが、苦手なことは無理をしない

相談出来る場所、人を作る

自分の中の才能に気付き、開花させて行くことで、

障がい(本人も周りも困っている状態)ではなく

特性(持って生まれた特徴)になりうる可能性を、しかと受け取ったのでした。

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